今年、世界遺産に登録されるのは何?
2015-06-15
今年も世界遺産委員会で新たな世界遺産が選ばれる時期になりました。今年は、日本が推薦している「明治日本の産業革命遺産」が、韓国の横やりで登録が微妙になっています。
そちらの問題はさておいて、今年の世界委員会で審議される候補遺産の中から、ラテンアメリカ関連をみると、次の2か国、2件が入っています。
★メキシコ:Aqueduct of Padre Tembleque, Renaissance Hydraulic Complex in America(テンブレケ神父の水道橋およびアメリカのルネサンス式水力施設群)
テンブレケ神父の水道橋というのは、1550年代にメキシコに渡ったスペイン人神父達によって建設された水道橋です。長さ904m、最も高い場所で38.75m、68のアーチを持つ石造建築物となっています。

★ウルグアイ:Fray Bentos Industrial Landscape(フライ・ベントスの産業景観)
ウルグアイ西部に位置するフライ・ベントス市において、19世から20世紀にかけて、南米とヨーロッパの人的交流により形作られた、先進的な産業地域ということです。

残念ながら、両者ともに観光的な魅力はあまり感じない遺産です。この2件は、いずれもリストへの記載勧告が出ていますので、新たな世界遺産に登録されることになると思います。
ラテンアメリカではないのですが、個人的に興味をひかれたのは、スペインの以下の2件です。
★Routes of Santiago in Northern Spain(スペイン北部のサンティアゴ巡礼路)
これは、すでに遺産登録されているサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路の拡大登録です。サンティアゴ巡礼路には、フランス、スペイン、ポルトガルをまたぐ、たくさんのルートがありますから、さらなる拡大も可能ですね。
★La Rioja and Rioja Alavesa Wine and Vineyard Cultural Landscape(ラ・リオハとリオハ・アラべサのワインとブドウ畑の文化的景観)
リオハはスペインを代表するワインですから、そのブドウ畑の景観が登録されるのはいいことです。ただし、今回は記載延期勧告が出ていますので、推薦のやり直しになりそうです。
2015年の第39回世界遺産委員会は6月28日~7月8日まで、ドイツのボンで開催されます。
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2014年の新世界遺産、中南米のまとめ!
2014-07-10
先ごろ決定した2014年の世界遺産について、中南米地域をまとめておきたいと思います。文化遺産については、先日紹介したように、アルゼンチン、エクアドル、コロンビア、チリ、ペルー、ボリビアの6カ国が共同で提出していた「アンデス道路網、カパック・ニャン(Qhapaq Nan, Andean Road System)」と、コスタリカの謎の石球で知られる「ディキスの石球のあるプレ・コロンビア期の首長制集落群(Precolumbian chiefdom settlements with stone spheres of the Diquis)」の2件が登録。自然遺産はなし。
文化と自然の複合遺産は、メキシコの「カンペチェ州、カラクムルの古代マヤ都市と熱帯雨林保護区(Ancient Maya City and Protected Tropical Forests of Calakmul, Campeche)」が登録されました。
文化遺産に登録されたコスタリカの石球はかなり有名ですね。コスタリカには、誰がどのようにして作り、何のために使われたか分からない石の球体がいくつも残されています。総数は200個以上あると言われますが、大きさはさまざまで、大きいものは直径2mにもなるようです。

ディキス石球の世界遺産登録を伝える現地紙Web版
これは、5世紀から10世紀頃に栄えたとさえるディキス文化の人たちが残したといわれています。例によって、さまざまな石の役割説が出ていますが、未だに謎の球体です。ただ、素人が見ても特に面白いものではありません。コスタリカの博物館の中にいくつか転がっていますが、世界遺産登録を機に少しは注目度が上がればいいと思います。
複合遺産に登録されたカラクムルの古代マヤ都市と熱帯雨林保護区については、古代マヤ都市がすでに文化遺産に登録されており、今回は周囲の熱帯雨林保護区を含めて自然遺産にも登録されたということです。

熱帯雨林に包まれたカラクムルのピラミッド。
カラクムルについてはこちらのページを参照。
日本ではマヤというとチチェンイツアやパレンケばかりが紹介されますが、カラクムルは開発が進んでいないこともあり、有名遺跡と比べて神秘性が保たれている素晴らしい遺跡です。最近は、カンペチェからの日帰りツアーが盛んで、観光客が増えているようですが・・・。
全体的に、中南米の登録は頭打ち感があります。バリア・リーフが1件だけ登録されているベリーズは、マヤの遺跡も多く、熱帯雨林の自然も素晴らしいのですが、登録に対する政府の熱意が弱いのでしょうね。
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インカ道が世界遺産に登録決定!
2014-06-22
日本では「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産登録が決定しましたが、南米では6カ国(アルゼンチン、チリ、ボリビア、ペルー、エクアドル、コロンビア)が共同で提出していたインカ道(el Qhapaq Ñan)の世界遺産登録が決定しました。
世界遺産登録のニュース記事
数年がかりで各国が協力して推薦を進めてきた努力がようやく結実した感じです。
カミーノ・インカあるいはインカ帝国の公用語ケチュア語でカパック・ニャンと呼ばれるインカ道は、インカ帝国が広大なアンデス地域を支配するために張り巡らせた道路網です。
昔は物や情報の往来に重要な役割を果たしたアンデス山中の道も、今はあまり使われなくなり、消滅の危機にあります。城や神殿などと違って、道は地味な存在であり、注目する人も多くありません。しかし、巨大な帝国を支えた歴史的価値は大きく、これをきっかけに各国に存在するインカ道の保全が図られるようになればばいいと思います。
観光的に見ても、アンデスの美しい自然の中を歩くことができるインカ道は、大きな魅力と価値を持っています。昨年は、ペルーのピサックにあるインカの道を歩きましたが、素晴らしい体験でした。せっかくの世界遺産登録ですから、機会があれば、またどこかの道を歩いてみたいと思っています。
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インカ道
世界遺産委員会で登録される新遺産は?
2013-06-06
今年も、新たな世界遺産が決定する世界遺産委員会の時期になりました。今年は第37回世界遺産委員会ということで、6月16日から27日の間、カンボジアのプノンペンで開催されます。
今回、日本で注目されているのは富士山の世界文化遺産登録ですが、古都鎌倉も候補に入っています。富士山は世界遺産登録の審査などを行う機関であるICOMOS(国際記念物遺跡会議)が登録を勧告しているため、登録は確実視されていますが、鎌倉はICOMOSが不登録を勧告しています。
一方、ラテンアメリカ地区は今回は不作です。候補に入っているのがメキシコの「El Pinacate and Gran Desierto de Altar Biosphere Reserve」のみです。スペイン語と英語が混じったおかしな名称ですが、エル・ピナカテとアルタール大砂漠生物保護区ということになります。
米国と国境を接するメキシコの北部に、アルタール大砂漠というのがあり、その東端に位置するのがエル・ピナカテです。この辺は、米国とメキシコにまたがるソノラ砂漠という広大な荒野が有名ですが、その一部でもあります。

メキシコ北部のイメージ(これはバハ・カリフォルニア)
この辺はバスで通ったことがあるだけでよく知りませんが、エル・ピナカテはカリフォルニア湾に接していることから生物の多様性に富んでいるらしく、ナショナルジオグラフィックなどでも取り上げているようです。
これについてはICOMOSが登録を勧告していますので、登録はされるでしょう。
さらに、来年の第38回世界遺産委員会の登録候補案件について見ると、ラテンアメリカはやはり少なく、以下の3件のみとなっています。
1.Qhapaq Nan, Andean Road System(アルゼンチン、ボリビア、ペルー他)
2.Precolumbian chiefdom settlements with stone spheres of the Diquis(コスタリカ)
3.Ancient Maya City and Protected Tropical Forests of Calakmul, Campeche(メキシコ)
1.の案件はカパック・ニャンと呼ばれるインカ帝国が南米に築いた長大な道、いわゆる「インカ道」です。数年前から南米の6か国が協力して世界遺産登録を目指してきましたが、ようやく候補となったのです。
2.は、コスタリカの古代文明と有名な球体の石です。古代文明の遺物でもピラミッドなどと比べて球体の石は地味なのですが、謎の文明として注目されていました。
3.はカラクムル遺跡と周辺の熱帯雨林です。カラクムル遺跡はすでに世界遺産登録されていますが、さらに範囲を拡大して再登録するということでしょう。
この中で、注目はカパック・ニャンですね。6カ国にまたがるという規模の大きさのみならず、古代文明の遺構としても他に例がないほど壮大なものです。今も残るカパック・ニャンを歩く人たちは多いのですが、年々劣化が進んでいるようで、世界遺産登録によって保護が進めばいいと思います。

インカ道について詳しく紹介している書籍
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マチュピチュ遺跡の入場規制が行われている
2011-07-22
近年、ペルーのマチュピチュ遺跡の人気が高くなり、観光客がかなり増加しているようです。このため、遺跡の環境破壊が進んでいると指摘されていて、ペルー政府は様々な規制を始めています。

7月15日には、遺跡の背後にそびえるワイナピチュという峰への登山を有料化しました。これまでは、遺跡に入場すればワイナピチュには自由に登れましたから、少し残念です。ちなみに、登山料は外国人の場合24ソルで、マチュピチュ遺跡の入場料と合わせて150ソルということです。
また、19日からはマチュピチュ遺跡そのものへの入場も、1日2500人に制限されたそうです。19日には、約300人の観光客が入場を断られたようで、翌日まで待てる人はいいのですが、そうでない人はお気の毒としか言いようがないですね。
最近は、古代遺跡や世界遺産に対する注目度が上がっていますが、中でもマチュピチュ遺跡の人気はすごいですね。まあ、写真を見るとマチュピチュに行きたくなるのは分かります。私も、昔、渋谷駅の構内に貼られていたマチュピチュ遺跡のポスターを見て、「いつか絶対に行くぞ」と思ったものです。
それから5年ほどで希望を実現しましたが、その時は結構感動しました。ですから、遺跡が好きな人には是非マチュピチュに行って欲しいと思うのですが、一方で、人気が出過ぎたことによる環境破壊は心配です。また、マチュピチュのような特定の遺跡だけに人気が集中する状況も少しおかしいと思います。
私が、いろんなラテンアメリカの遺跡に行った経験からすると、マチュピチュは決してNo.1の遺跡とは思えません。行きたいのはわかるのですが、人気が加熱している時はトラブルが多くなりがちです、あまり無理せず、ほかの遺跡に目を向けてみることも大事だと思うのですが…。
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