映画「アバター」はラテンアメリカの歴史と重なる
2009-12-25
ジェームス・キャメロン監督が作製した話題の映画「アバター」を見てきました。
アバターの一場面。先住民を攻撃する騎兵隊のイメージ
ラテンアメリカとあまり関係がないようですが、ストーリーや画像のイメージからアメリカ大陸を侵略したスペインなどの蛮行と重なるところがあって、非常に興味深かったですね。
映画のストーリーは、ある惑星の地下に貴重な鉱物資源が眠っているため、それを求めた人間たちが地球からそこに出かけていったところから始まります。ところが、そこには先住民が住んでいるために、邪魔になって追い払おうとします。そこで、主人公の地球人が先住民と同じ肉体を遠隔操作する形で先住民と接触するのですが、彼らの生き方に感化され、先住民のリーダーとなって地球人と戦うことになるのです。
ストーリー的には非常にシンプルで、ご都合主義も多いのですが、基本は人間の欲望によって引き起こされる侵略戦争を糾弾するものとなっています。
アメリカの歴史は、まさにこの映画と重なります。最初にアメリカ大陸に到達したスペイン人は、金を求めてメキシコに侵入しました。そこには先住民が築いたアステカ帝国が存在したため、武力を持って制圧し、金銀財宝だけでなく広大な国土をも支配するようになったわけです。
映画では、先住民側が勝利して終わります。それはキャメロン監督の希望を表現しているのではないかと思います。しかし、現実の世界では、そうはいきません。
スペイン人たちは、アステカ帝国の弱みにつけこんで首都に侵攻しましたが、若き指導者クアウテモク王の反乱によって大勢の死者を出しながら退却を余儀なくされました。ここまではアバターと同じですが、スペイン人たちは態勢を立て直して、再びアステカの首都を攻撃し、ついに帝国を滅ぼしてしまいました。
人間が持つ欲と憎悪を考えれば、仲間が無残に殺されて黙って引っ込んでいるわけがありません。映画アバターの先のストーリーを考えれば、再び惑星に侵攻した地球人の大軍によって先住民は殺され、自分たちの土地を奪われることになるのは間違いないでしょう。
この映画が持つ特徴には、人間が生み出す兵器の恐ろしさを示していることもあります。キャメロン監督はインタビューで子供の頃のベトナム戦争のイメージだと語っていましたが、まさに米軍がベトナムで行った残虐な破壊行為を視覚化しています。その凄まじさは、これまでの戦争映画をしのぐと思います。
未来の映画はどうしてもファンタジー的になり、リアルな戦闘は表現できないのですが、この映画は未来の戦闘を生々しく描いています。その点も、人間の行為を絵空事にしないために重要だと思います。そして、人間が生み出す恐怖と対極に描かれた、先住民とそれを取り巻く自然の美しさや調和の表現は素晴らしいと思います。
何も考えなければ、ただ面白いとか、ストーリーが安易などという感想で終わってしまう映画ですが、そこに込められたメッセージや教訓を考えていくことで、見る人にとって、非常に価値がある映画になると思います。
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