謎の トゥーラ 遺跡に行く!
2014-04-29
今回は、前回のソチカルコに引き続きトルテカ文明の遺跡とされているトゥーラに行きます。
トゥーラ遺跡のピラミッド上にある石像
この遺跡の最大の特徴が、ピラミッド神殿の上に立つ巨大な石像です。トルテカの戦士を象っているとされますが、その謎めいたいで立ちに、生命維持装置を付け、光線銃を持つ宇宙人だと言う人もいて、なかなか面白いのです。
興味深い遺跡ではあるのですが、全体的に見どころに乏しいのが難点で、日本でもあまり知られてはいません。しかし、私はこの遺跡が結構好きで、これまでに3回も行きました。行くたびに遺跡の整備が進んでいたため、今回も、どこまで遺跡が変わったか見るのが楽しみでした。
場所は、イダルゴ州のトゥーラという街の近くで、メキシコシティからバスで1時間半ほどです。トゥーラ行の1等バスはシティの北ターミナルから出ているので、宿から地下鉄で向かいます。
ターミナルには様々なバス会社のチケットブースが並んでいます。トゥーラ行バスのチケット売り場に行くと「バスはすぐに出る」と言います。急いでお金を払うと、チケットと共に缶コーラとイヤホンを渡されました。
これまで様々なバス会社を利用しましたが、こんなものを渡されたのは初めてです。時間もないので、すぐバス乗り場に向かいました。停まっていたのは綺麗なスーパーハイデッカー型の大型バスで、座席も液晶テレビも1等バスより綺麗ですし、客室と運転席を隔てるドアまでついています。

運転席と客席の間にドアが付いたバスの車内
明らかに、これは1等より上のクラスです。競争の激しいメキシコシティ発の一部バス路線に導入されているもので、値段も高いのですが、その分快適に旅ができます。
間もなくバスは出発。飛行機のようにイヤホンで音楽か映画の音声が選択できます。液晶テレビを見ると、忠犬ハチ公をモデルにした米国映画が始まったので、缶コーラを飲みながら映画を楽しむことにしました。
快適なバスだと時間が経つのも早く、すぐにトゥーラのターミナルに到着しました。問題はここからどうやって遺跡まで行くかです。実は、遺跡はトゥーラの町の背後にある丘の上にあり、以前は、徒歩で20分程度で登って行けたのです。ところが、遺跡公園の整備が進み、出入り口が街とは反対側に位置する博物館の所に制限されました。一度だけ、そこからバスターミナルまで歩いたことがありますが、1時間近くかかったと思います。
最初、バスで行こうと思いましたが、人に聞いてもどのバスが行くのかよくわかりません。仕方なく、タクシーで向かいました。料金は30ペソ(270円くらい)ですから安いです。
遺跡の入り口で入場料52ペソを払い、まず、隣接の博物館に入ります。この建物は20年前にはできたばかりの立派な施設でしたが、今は古さが目立ちます。博物館の展示も、以前は充実していると思われたのですが、ソチカルコ遺跡の博物館を見た後では、みすぼらしさが感じられます。もっとも、私が最初にここに来た30年前は、トタン屋根の掘立小屋しかなく、そこに発掘物を押し込んでいたのです。

遺跡の入り口に博物館がある。
出入り口から遺跡に入ると、細い歩道がサボテンの荒野に延々と続いています。入り口から最初の建造物までこんなに遠い遺跡は珍しいです。炎天下の砂漠に灌木とサボテンが密集して生えている状態で、中には花を咲かせている樹やサボテンがあり、回りを鳥や虫が飛び回っています。自然観察をするにはいいのですが、暑くて疲れます。

実をつけたウチワサボテン。鳥や虫が食べにくる。
遺跡は、メインのピラミッドBが最大の見どころです。トゥーラが栄えた西暦900年ころに建設されたもので、ピラミッドの全ての壁面にジャガーや鷲のレリーフがはめ込まれ、赤を基調とした鮮やかな色に塗られていたという、壮麗な神殿だったようです。

ピラミッドの壁面に残るジャガーのレリーフ。
そのピラミッドの上には大きな人型の石像が4つ立っています。これは着飾ったトルテカ戦士のデザインで、用途は神殿の屋根を支えていた柱だったそうです。デフォルメによって宇宙人のような雰囲気になっているのが面白いです。こうした巨大な石柱はメキシコ・中米地域では他にあまり例がないので、見る価値はあると思います。

ピラミッドBの全景
また、この都市も外敵の侵入をいち早く発見することができる山の上に作られているため、ピラミッドの上からは周辺地域を遠くまで見渡すことができます。この眺望の良さもトゥーラ遺跡の見所でしょう。その他、球戯場やピラミッドC、焼かれた宮殿などの見どころもありますが、それらは他の遺跡とあまり変わり映えがしません。

ピラミッドBの上から、遠くに石油プラントらしき火が見えた。
遺跡の中心部の見学を終え、遺跡地図に示されていた少し離れた建造物まで行こうと思いました。そこで、カービン銃を持った警備員らしき制服のおじさんに行き方を尋ねると、「一人でそこへ行くのは、非常に危険だ。おれが連れて行ってやる」と言うのです。
私は困りました。どうしてもそこに行きたいわけではないので、危険ならやめようと思ったからです。しかし、おじさんはどんどん歩いて行き、「早く来い」と命令口調で言う始末です。
見学ルートではないため人っ子一人いない炎天下の道です。周囲は背丈ほどの灌木やサボテンの林が続き、遠くに人がいても私たちの姿は見えないはずです。おじさんが持つ年季の入ったカービン銃が不気味に揺れます。かつて米国のドラマ「コンバット」でヘンリー少尉が持っていた22口径の連射式ライフル銃なのです。
どこまでも荒野を歩き続け、恐さと暑さと疲労で、途中で「もう帰る」と言いたくなりましたが、すでに、どこを探しても誰もいない林の中です。おじさんにおかしな気があれば言ったとたんにアウトですし、親切で案内してくれるのなら失礼です。仕方なく、覚悟を決めておじさんの後について歩きました。
ずいぶん長い間歩いたようですが、30分程度で灌木の茂みに囲まれて小さな建造物がポツンとある場所に着きました。おじさんは、誇らしそうに「これだ。写真を撮れ」と言います。あまり気は乗らなかったのですが、せっかく来たのだからと何枚か写真を撮り「もう帰りましょう」とおじさんを促しました。

一部が円形になっている珍しい形の祭壇があった。
おじさんは、何か言いたそうでした。遠くまで案内したのに、私があまり興味を示さなかったのが不満だったのかもしれません。その時、持っていたトランシーバーから「おい、いまどこにいるんだ?」と声が聞こえました。おじさんはあわてて「いま、お客さんを案内している。すぐ、戻るから」と応えました。
おじさんは、「近道を通って帰ろう」と言うのです。ところが、それは周囲が全く見通せない藪の中で、おじさんも道が定かではない様子なのです。もはや、私は自分がどこにいるかもわかりません。イバラやサボテンに囲まれた、曲がりくねった細い道をおじさんは早足で歩き、私は必死で後を追います。近道というのに、私には遠回りに思えてなりません。20分ほどで、やっと元の道に戻りホッとしました。
博物館に着き、私はおじさんにビール代程度のチップを渡しました。嬉しそうな笑顔を作ったおじさんを見て、私は「何事もなくてよかった」と胸をなでおろしたのでした。
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