メキシコの暗黒を見るイグアラ事件
2014-11-07
メキシコのニュースによると、「イグアラ事件(Caso Iguala)」というのが国内で大問題になっているようです。

イグアラ事件を伝えるメキシコ版BINGニュースの画像
この事件は、メキシコシティの南200㎞にあるゲレロ州のイグアラという町で9月26日に起きました。ノルマリスタと呼ばれる政府に対する抗議運動を行っている学生たちが警察とトラブルになったのですが、その後、学生ら43人が失踪してしまったというものです。
その後、学生たちの捜索が行われましたが、どうやら学生たち以外にも被害者がかなりいるようで、身元不明の28人の遺体が発見されたり、学生を殺したと証言する者が現れたりしたのです。
こうした状況に対し、政府の対応の悪さが批判され、現地警察に対する抗議活動も盛んになりました。その結果、政府は、地元警察が麻薬組織と共謀して犯罪行為にかかわったとし、政府軍部隊と憲兵隊を投入してイグアラの警察を武装解除したのです。
イグアラには大勢の兵隊や憲兵が駐留し、まるでクーデター鎮圧軍に支配されたような感じになりました。そして、11月4日に事件の首謀者とみられる人物が逮捕されたのです。
それは、イグアラの市長ホセ・ルイス・アバルカと妻のマリア・デ・ロス・アンヘレス・ピネダでした。治安当局は二人を40日にわたって探し、メキシコシティの隠れ家に潜伏していたところを発見したそうです。

イグアラ市長逮捕を報じる現地紙
実は、この二人、市長夫妻でありながら凶悪な麻薬組織の幹部でもあるという、とんでもない人物だったのです。麻薬組織に支援されたアバルカがイグアラ市長になると、汚職をし放題。自分に敵対する者はどんどん殺してしまうという、まるで映画のようなことが現実になったのです。
実際、市長と対立し農民擁護の論陣を張った政治家は何者かに拉致され、拷問されて殺害されたといいます。しかも、関係者の証言によると、アバルカ市長自らがこの政治家を殺したというのですから驚きです。
それで、なぜ、学生たちが拉致されたかですが、それには市長の奥さんが関係していたそうです。この奥さんは市長を凌ぐスーパー悪党で、地元を支配する麻薬組織の大物だったのです。強い野心を抱くこの妻は、夫が市長であることに満足せず、自分が市長になって悪の限りを尽くしたかったのでしょう。
学生たちが失踪した日は、奥さんが2年後のイグアラ市の選挙戦に出馬するための催しを行う予定だったのです。そこに、抗議活動を行う学生たちが到着しました。この報告を受けた市長夫妻は警察署長になんとしても学生たちを市内に入れるなと命じました。すると、警察は学生たちを排除するため、とんでもないことをでっち上げたのです。
それは、学生たちを地元の組織と対立する麻薬組織のメンバーにしたのです。この結果、麻薬組織の影響下にある警察によって数名の学生が無残な方法で殺害され、近くにいた学生とは関係ない人も誤って銃撃されて殺され、さらに43人の学生が銃撃されたうえで捕らえられて警察車両で近くの町の警察に連れて行かれました。
この警察も同じ組織の支配下にあり、誰がどこに連行したか分からなくするための工作だったといいます。そこで、学生たちは麻薬組織の始末屋に引き渡され、殺されてしまったとみられています。未だに彼らの遺体は発見されていませんが、生きている可能性はほとんどないようです。
こういう、映画の中でも漫画的と言えるストーリーが現実にあるとは驚きです。
今日のニュースでも、国際的な人権団体が、メキシコの状況に深刻な懸念を示し、メキシコ政府の対応を批判しています。しかし、前政権が麻薬組織と対立した結果、組織が無差別殺戮に近い過激な行動に出て、さらに状況が悪化したことを考えると、暗たんたる思いになります。
もう一つのニュースでは、この事件が起きたことで、世界的に有名な観光地であるアカプルコの観光客がここ数週間で60%減少したということです。イグアラはメキシコシティからアカプルコに向かう中間くらいの位置にありますから、当然、影響はあるでしょう。

アカプルコの観光客減少を伝える現地紙
観光収入が減るのは大変ですが、それより麻薬組織をなんとかしないとメキシコに未来はないと思います。
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