白熱するメキシコの大統領選。鍵はトランプ大統領…?
2018-02-01
メキシコシティ俯瞰
大統領選挙に出馬する三候補
今年7月にメキシコの大統領選挙が行われます。
メキシコ大統領は任期6年で再選は禁止となっているため、次期大統領の座を巡って主要政党の候補者たちの戦いが加熱してきました。
大統領選の主要候補者は3人います。
一人目は現大統領が所属するPRI(制度的革命党)が公認すると見られるホセ・アントニオ・ミード氏(PRIの候補者正式決定は2月)。
二人目は2000年と2006年の大統領選に勝利したPAN(国民行動党)の党首だったリカルド・アナヤ氏。
三人目はMorena(国家再生運動)を率いるアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール氏(通称アムロ)。
メキシコの政治は難しく、非常に流動的です。各候補を支援する政党の立ち位置を確認すると、中道右派のPAN、伝統的な保守派のPRI、中道左派のPRD、左派のMorenaとなります。
PRIのミード氏は前政権と現政権で財務公債相などを勤めた人で、2014年には外務大臣として来日しています。ただ、PRIの党員ではなく、政治家としての経験もないのです。こういう人を大統領候補にするとは、かつては絶対的な政治権力を誇ったPRIが窮地に陥っている証でしょう。
PANも混乱しています。これまで、カルデロン前大統領夫人のマルガリータ・サバラ元連邦下院議員がPANの候補となると見られていました。ところが、中道右派のPANは中道左派のPRD(民主革命党)と選挙連合を組み、アナヤ氏を候補に立てました。メキシコの右派と左派が手を組むとは、ちょっと前までは考えられなかったことです。
こうしたPANの動きに対し、マルガリータ・サバラ氏は反旗を翻して離党。独立系候補として選挙への出馬を狙っています。
Morenaというのは2014年にできた左翼政党で、ロペス・オブラドール氏がリーダーです。この人は元々PRDに所属しており、メキシコ市の市長として活躍しました。その後、2006年と2012年の大統領選に出馬したのですが、敗北。その後、PRDを飛び出してMorenaを創設したのです。
ロペス・オブラドール候補が優勢
今回の選挙で、現在、支持率トップを走るのはロペス・オブラドール氏です。知名度が高い上、年金や福祉などで低所得者層への手厚い政策を打ち出していることへの期待も大きいのです。一方、現政権の政党であるPRIは汚職などでかなり評判が悪くなっています。
また、今回の選挙の行方を左右しそうなのが米国のトランプ大統領です。
メキシコは歴史的に米国の強い影響下にありました。かつては、アメリカに広大な領土を奪われたことがありますし、米国企業の経済的な収奪による苦しみを受けたこともあります。しかし、1994年に発効したNAFTA(北米自由貿易協定)により、メキシコ経済は大きな恩恵を受け、アメリカとうまく付き合うことが重要という考えが多くの人に定着したのです。アメリカとの関係改善に努めた保守派のPRIや右派のPANが政権を握ってきたことからもそれが分かります。
ところが、トランプ大統領はメキシコを侮辱し、国境に壁を作るとか、NAFTAを自国の都合のいいように見直すなどといったことを言い始めました。
これでメキシコ人の怒りに火がつき、トランプ批判を繰り広げたロペス・オブラドール氏に対する支持が集まっているのです。
このまま行くとロペス・オブラドール氏が大統領になるでしょう。
ただ、ロペス・オブラドール氏には大衆迎合という批判があり、大統領になれば国家財政は悪化し、アメリカとの関係も悪化、経済が停滞することも予想されます。
そうなれば、メキシコに投資している多くの日本企業にとっても打撃となるなど、日本経済への影響も少なからずあるはずです。今後の成り行きに注目したいと思います。
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