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米国映画界を席巻するメキシコ旋風

 2018-03-06
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アカデミー賞4冠「シェイプ・オブ・ウォーター」

米国映画界の「スリーアミーゴス」


 アメリカのアカデミー賞の受賞作が発表になり、ギレルモ・デル・トロ監督の「シェイプ・オブ・ウォーター」が作品賞を受賞。同作は監督賞、美術賞、作曲賞の4冠となりました。
 ギレルモ・デル・トロ監督はメキシコ出身ですが、近年、アメリカの映画界ではメキシコ出身の監督が大活躍をしています。特に有名な3人の監督は「The Three Amigos of Cinema」と呼ばれているそうです。
 この3人は、ギレルモ・デル・トロ(以下トロ)、アルフォンソ・キュアロン(以下キュアロン)、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(以下イニャリトゥ)の3人です。
 最近のアカデミー賞を見ると、2014年に「ゼロ・グラビティ」でキュアロンが監督賞を受賞、2015年に「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」でイニャリトゥが作品賞、監督賞を受賞、2016年に「レヴェナント: 蘇えりし者」でイニャリトゥが2年連続の監督賞を受賞といった具合。そして、2018年はついに3人目のアミーゴであるトロが作品賞、監督賞を受賞したわけです。

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スリーアミーゴス。左から、キュアロン、トロ、イニャリトゥ。


二人の監督を育てたメキシコ国立自治大学


 この3人のうち、キュアロンとトロはメキシコ国立自治大学で映画の勉強をしていました。この大学にはチェ・ゲバラ講堂という大きなホールがあり、ここでは学生向けに非常に安い料金で世界の良質な映画を見られるようにしていたのです。
 私が国立自治大学で勉強していた時には、授業が終わると、毎日のようにこの講堂に行き、映画を見ていました。二人の監督もたぶん頻繁にこの講堂で映画を見ていたはずです。
 当時、学生たちに人気があった監督は、メキシコ映画界に大きな影響を与えたソ連のセルゲイ・エイゼンシュテインや日本の黒澤明でした。日本では映画産業が不振な時代にメキシコでは良質な映画を求める多くの人たちがいて、1990年代に始まった革新的な映画運動である「ヌエボ・シネ・メヒカーノ」の元で多くの優秀な監督が育っていきました。その中に、この3人もいたのです。
 私が1993年当時、国立自治大学で見ていた映画はアメリカやヨーロッパ、日本の作品が多く、メキシコ映画はほとんどありませんでした。大学の別のホールでは「日本映画の若手監督の特集」と題された作品群も上映されていて、「日本映画はまだメキシコ映画より優れている」と、のんきに感じていたものです。

メキシコの映画運動が開花した2000年代


 ところが、2000年代になると、イニャリトゥの「アモーレス・ペロス(2000年)」、キュアロンの「天国の口、終りの楽園(2001年)」が登場します。この2作品を見たときに、「日本映画は完全に負けている」と思いました。
 方向性は大きく違う二人の監督ですが、いずれの作品も独創的で優れた世界観を持っていました。これだけの映画を作る力がメキシコから出てきたことに、大きなショックを受けたのです。
 その後、上述したように、二人はアメリカの映画界で活躍しました。そこに、2002年の「ブレイド2」の監督になった怪獣オタクのトロが加わります。2013年には芦田愛菜を起用したことで話題になった怪獣映画「パシフィック・リム」を作りましたが、私は“色物”的な感じで見ていました。
 ところが、今回の「シェイプ・オブ・ウォーター」ではアカデミー賞で堂々の4冠を達成する快挙です。
 今後、メキシコの「スリー・アミーゴス」がどのような活躍をするか楽しみです。私はまだ「シェイプ・オブ・ウォーター」を見ていませんので、とりあえず、見に行きたいと思います。


 


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