南米チリで誕生した右派政権について思うこと

 2010-01-19

 チリの大統領選挙の決選投票が1月17日に行われ、中道右派のセバスティアン・ピニェラ元上院議員(60歳)が当選しました。ピノチェト将軍による軍政の終結から20年間続いた中道左派連合政権が破れ、政権交代が実現することになったわけです。


投票するピニェラ候補

 中道左派政権から中道右派政権に変わるということで、政策的な変化に懸念が生じるところですが、昨年12月に実施された国会議員選において、中道左派連合は上院で過半数の議席を確保しましたし、下院でも勢力は拮抗していますので、政府の路線が大きく変わることはないとみられています。

 チリにおけるかつての軍政時代を経験した人は、この変化にとまどうでしょう。私も、軍政時代のチリに2カ月以上滞在し、反軍政の象徴であったノーベル賞詩人パブロ・ネルーダの追悼集会などにでかけたことがあります。

 そこに集まった群衆の自由を渇望するすごい熱気と、それを取り囲むカラビネーロ(武装警官)たちのロボットのような不気味な迫力を今も鮮明に覚えています。当時は、ガルシア・マルケスが書いたドキュメンタリー「戒厳令下チリ潜入記(岩波新書)」という本の主人公が命の危険を犯してチリに潜伏していたころで、国全体が重苦しい閉塞感に包まれ、貧しい人達の嘆きが満ちているような状況でした。

 その後、政権は反軍政を訴える中道左派政権になり、軍政によって迫害され、外国に亡命していた人たちも帰国して、政府の要職についたりしました。その中には、一時、経済大臣も担当した日系のカルロス・オミナミ上院議員もいます。彼は今回の大統領選挙で3位となったマルコ・エンリケス・オミナミ下院議員の養父になります。ちなみに、オミナミは日本姓の「大南」からきています。

 南米では多くの国で左派反米政権が誕生していますが、こうした現象は、低開発の中で社会的な格差などの問題が解決できずにいる国に多く見られます。一方、チリやメキシコのように経済開発がある程度進んでいる国においては、自国が直面する経済的な問題を解決するためには、米国と協調していくほうがいいということで右派系の政権選択をするケースが出てきました。

 メキシコの場合は、2000年の大統領選挙で、長く続いたPRI(制度的革命党)の一党支配から左派に移るかと思いきや、米国と協調した経済開発を訴える中道右派のPAN(国民行動党)が政権を握りました。今回のチリの大統領選挙でも、長期政権における国民の閉塞感が、異なった政策による経済発展という新しい希望を与えてくれる大富豪のピニェラ候補支持につながったのでしょう。

 政治は振り子のように左から右に振れました。軍政による迫害を受けたオミナミ一家は落胆したでしょうが、また、時代は変わるはずです。

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