メキシコの元大統領候補が誘拐された!

 2010-05-18
 メキシコの元大統領候補であるディエゴ・フェルナンデス・デ・セバリョス氏(Diego Fernández de Cevallos)が誘拐されたというニュースが流れています。

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セバリョス氏

 現地の報道によると、同氏は、14日の夜メキシコ中央部のケレタロ州に所有する農場の近くで行方不明となったそうです。そこには、同氏の車と何者かと争った痕跡や血痕が残されていたということで、現在のところ、誰に誘拐されたわからないものの、麻薬グループに誘拐された可能性が高いと囁かれているようです。

 実は、今、メキシコでは政府と麻薬組織の間で激しい麻薬戦争が行われています。アカデミー賞4部門を受賞した「トラフィック」という米国映画がありましたが、この中でもメキシコのマフィアと軍が結びついて麻薬の密売を行っているというメキシコの深刻な状況を描いていました。こうした状況に対し、セバリョス氏が所属するPAN(国民行動党)が政権を握るメキシコ政府は、麻薬組織の撲滅を目指す戦いを始めたのです。ところが、これに対し麻薬組織は激しく反発し、無差別殺戮に近い報復を始めました。

 警察や軍が麻薬組織の幹部などを殺せば、麻薬組織は警察や軍を標的に殺戮を実行するという凄まじいことになりました。この結果、政府と組織の対立が始まって以来2万3000人以上もの人が死ぬという危機的な状況になっているのです。

 セバリョス氏の誘拐が麻薬組織によるものだとすれば、これまで地方の政治組織に対する攻撃を中心としていたものが国家に対する大胆な挑戦を行うようになったことを意味します。下手をすれば、かつてコロンビアで麻薬戦争が激化したときのように、国全体を混乱に陥れかねないのです。

 このセバリョス氏については、私も少し思い出があります。この人は、政権政党であるPANの創設者の息子ですが、1994年の大統領選挙にPANの大統領候補として出馬しました。この時、私はメキシコに留学中で、この選挙戦にかなり関心を持っていたのです。というのは、当時のメキシコは絶対的な政治権力を握っていたPRI(制度的革命党)の一党支配体制下にあり、世界の主要国の中でメキシコのPRIと日本の自民党だけが圧倒的な長期政権を維持し続けているとされていたからです。

 ところが、この時日本では細川政権が誕生し、自民党は政権政党ではなくなりました。メキシコの知識人は、「日本でも政権交代が起きた、次はメキシコだ」と叫んでいたのです。ただし、彼らが次の政権政党として考えていたのはPANではなくPRD(民主革命党)でした。私も、PRDの勢いからして政権交代が可能ではないかと思いました。そして、この時始めて大統領候補による公開の討論会が開かれたのです。

 その結果は、驚いたことに、PANのセバリョス候補の主張が最も好評価を受けたのです。この時は、PRIの圧倒的な政治力を突き崩すまでには至りませんでしたが、PANに対する支持はどんどん高まっていき、2000年の大統領選挙で、ついに政権を獲得したのです。中途半端な政権交代をした日本と違い、メキシコはPANによって新たな政治を確立し、経済の立て直しを進めました。ところが、最近になって麻薬戦争が勃発したことで、政権の足元をすくわれかねない状況になってきたわけです。

 セバリョス氏が無事解放されるとともに、この国が早く落ち着きを取り戻し、安全に生活や観光などができるようになってほしいものです。

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コメント
私も自身のゼミレポート執筆の際に90年代の政治背景について触れたので、セバジョスについては思い入れがあります。セバジョスほどの人物がボディーガードも付けずに夜中に動き回るなど、どうも腑に落ちない点の多い事件ですね。
今後の動向が気になるニュースです。
【2010/05/20 01:22】 | じゅんじゅん #- | [edit]












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