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聖なる谷のチンチェーロ村と遺跡を散歩する

 2013-02-25
 これまで聖なる谷を代表する三遺跡のうち、ピサックとオリャンタイタンボを紹介しましたが、今回は最後のチンチェーロです。

 聖なる谷の見どころとしては、この他、マラスの塩田とインカの農業試験場というモライがあるのですが、今回は予想外の体調不良に見舞われたため、行くのは見合わせることにしました。特に、マラス塩田は白く輝く棚田が魅力なのですが、雨季には塩の採取は行われず、茶色になってしまっているということで、行く気が失せました。

 チンチェーロ村はクスコからバスで40分ほどのところにあり、オリャンタイタンボあるいはウルバンバ行きのバスが停まります。3日前にオリャンタイタンボからコレクティーボで帰ってきたのですが、全く同じルートをバスでたどることになりました。

 クスコを出て40分、バスは頻繁に停まって乗客が乗り降りします。同じ村の中でも4カ所くらい停まりますので、どこで降りたらいいのかよくわからないのです。そこで、車掌に「チンチェーロ遺跡で降りる」と言うと、「分かった」というように頷きます。

 そして、チンチェーロ村につきましたが、車掌は「まだまだ」と言います。村に入って3回ほど停車した後、ようやく「ここだ」というのでバスを降りました。ペルー人の学生らしき二人連れも降りて歩いていくので、その後を追うように歩きました。

入り口
チンチェーロ村の入り口に立つ先住民女性のモニュメント


 村から少し坂を上ると、係員がいて「入場券を見せろ」と言います。周遊入場券を見せると、「まっすぐ行って左に曲がれ」と言うのです。「そうか」と思って歩いて行ったのですが、どこを左に曲がるか分かりません。「まあいいか」と思い、まっすぐ歩いていくと、チンチェーロの村の奥にどんどん入って行きます。豚や羊があちこちで遊んでいて、村人が時々顔を出して「ブエノス・ディアス(おはよう)」と言うので、私も挨拶を返しました。

 村の人が観光客慣れしているということでしょう。一般的な地方の村に外国人が入って行くと、ほとんどの場合警戒されてしまいますし、こちらも迷惑にならないように気を使うのですが、この村では観光客がいるのは当たり前という感じで、若い人から老婆まで挨拶してくれるのです。これは気分がいいもので、私は鼻歌気分でどんどん歩いていきました。

村
村は丘の斜面にある


 のんびりした典型的なペルーの山村で、風景は素晴らしいのですが、動物がいたる所にいるため、獣臭くてたまりません。しかも、道は泥んこで、豚は嬉しそうに転げまわっていますが、私のトレッキングシューズは泥まみれになっています。

 山を登りすぎて家もなくなり、これは道が違うと思って、坂を下りました。遺跡は村の中心にある教会のところにあります。そこには鐘楼の塔が立っているのは知っていたので、高いところから見ればわかると思ったのですが、そんなものは見えません。しかし、小さな村ですから適当に歩けば教会にぶつかるはずと思って歩いていると、間もなく教会の上の方に出ました。

 チンチェーロ村の遺跡はオリャンタイタンボやピサックと違って村と一体になっています。そのため、入場者をコントロールする場所が村内に複数あり、観光客は教会周辺の村に入るにも入場券が必要になるようです。

 教会は村はずれの丘の中腹にあります。ここには元々インカの大規模な都市があり、スペイン人はインカの建物を壊して、その石垣の上に教会を建てたのです。
 
石垣
今も残るインカの神殿跡の石組

 
 教会の周囲には、写真のように神殿らしい緻密な作りの石垣が残っています。オジャンタイタンボやクスコの石垣にはかないませんが、白壁のコロニアル様式の建物とマッチして歴史を刻み込んだ風情を醸し出しています。日曜日は教会前の広場に大勢の物売りが店を広げるようですが、この日は数人の先住民の女性たちがいるだけで、非常に静かでした。
 観光客はにぎやかな場所を好むのでしょうが、私は静かで、住民の日常生活が見られる場所の方が好きです。

 インカの神殿があった教会の北側には広場があり、その北側は谷を挟んで向かいにある緑豊かな丘を望みます。東には階段状の石垣があり、そこには自然石を加工した観覧席のようなものが作られています。地元の人は、インカの支配者が広場で行われる行事を見るために作られた椅子だと言っていました。

チンチェロ椅子
自然石で作られた支配者の椅子?


 インカの人たちは、こうした自然石を特別なものとして扱ったようですから、その可能性は高いでしょう。その石の椅子をみると、広場に展開するスペクタクルと、広場に面して設けられた長い石垣の上に並んで見物をしている観客たちを見下ろしていた支配者が想像できます。

 この石には観光客が触れないようにロープが張ってあるのですが、この時、地元の農民と言う年配の男性が来て、石に上ってしまったのです。そして、私に「ここにプーマがいるから上って来い」と言います。どうやら椅子のところにピューマの彫刻があるようなのです。しかし、立ち入り禁止区域ですから、私がためらっていると、遺跡の監視員が来てそのおじさんを呼びました。
 
 監視員から「あんた何なの? ガイドなの?」と詰問調で聞かれたため、おじさんは不快そうな顔になりました。後で、私が「何を言われたの?」と聞くと、「何でもねえよ!!」と言います。「やーい、怒られた」とからかおうとしましたが、言い方がわかりません。するとおじさんが「もっと凄いのを見せてやるよ」と言って歩きだしました。

だんだん畑
インカの段々畑


 後をついていくと、広場の東側に広がる段々畑の下の方に歩いていきます。そこには大きな自然石があり、一目で、サクサイワマンの近くにあるケンコーと同じだと思いました。ケンコーは巨大な自然石を加工して宗教儀式を行う場所にしたものですが、ここの岩も同じように様々な加工がしてあります。中をくりぬいて人が通れるような道を作り、表面を削って椅子のようなものも作っています。

巨石
上から見た巨石。通路も作ってある。


 「ここのことは観光ガイドも知らないよ」とおじさんは得意気に言います。これだけの場所をガイドが知らないとは思えませんが、実際にここまで客を案内するガイドはいないのでしょう。ツアーでは、せいぜい教会と広場までしか見ないのだと思います。

おやじ
巨石に腰かけたおじさん


 おじさんのおかげでいいものが見れたと感謝しながら広場に戻ると、雨が降り出しました。広場にいた物売りの女性たちはあわてて商品をしまって、建物の軒下や石垣のくぼみに避難します。私も軒下に隠れたのですが、雨が強くなったために、近くの土産物屋に入りました。最初、店の主人は土産を売りつけようと一生懸命でしたが、私に買う気がないと分かると、世間話を始めました。

 二人で日本とペルーの比較をあれこれしていると30分ほどして雨がやみました。店を出ようとした私に「気を付けていい旅行しなよ」と主人は声を掛けてくれました。「ありがとう」と言って外に出ると、坂道の向こうに雨上がりの美しい田園風景が広がっていました。

 濡れた街路では民族衣装を着た女性たちが、まだ雨宿りをしています。物音さえほとんどしない雨上がりの夕刻、そこには、何物にもとらわれない、ゆったりとした時間が流れていました。私は深呼吸をしてから坂道をゆっくりと降り始めました。「この村に、いつかまた来たいな」と思いながら。

遠景
チンチェーロ遺跡と村の遠景


 次はパチャカマ神殿へ向かいます。



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コメント
他に観光客のいない遺跡を独り占め
うらやましい!!

この記事を先に見ていれば
たっぷり時間を取って見て回ることができたのにと
残念です
【2013/07/02 22:44】 | 川口由紀子 #- | [edit]
川口さん

コメントありがとうございます。
チンチェーロは、私も期待しないで行ったのですが、いいところでした。

次の機会には、是非、お訪ねください。
【2013/07/03 10:13】 | ヴィクーニャ #- | [edit]












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