謎のカブレラストーンを見に行く
2013-03-04
地上絵で有名なナスカの隣にイカという街があります。ここに、オーパーツ(古代の技術や知識では製造が不可能な遺物)として有名なカブレラストーンというものがあります。以前、日本のテレビ番組でとりあげられたことで日本でも知られるようになり、関連書籍も何冊か出版されています。今回は、このカブレラストーンを見に行くことにします。
カブレラというのは、イカで内科医をやっていたハビエル・カブレラさんのことです。この人は、先住民が発見したという表面に様々な絵が描かれた石を収集し、それらの絵が恐竜時代に人間がいたことや、宇宙人が地球に来ていたことを示していると主張したのです。
なんだか眉唾的な話ですが、ペルーに詳しい人が「面白いので行って見よう」というので、暇だったこともあり、イカまで行ってみることにしました。
イカまでリマから300㎞以上あります。こちらのバスは制限速度が90㎞/hとなっており、リマ市内から片道5時間近くかかります。それを日帰りで行くのですから、朝早く出なければいけないということで6時半の長距離バスに乗りました。
ペルーの長距離バスはたいていが2階建てです。これまでもよく利用しましたが、今回初めて2階の一番前の席が取れたのです。数日前、オンボロバスでパチャカマックに行ったのと同じ道をバスは走ります。その時とは違って、見晴らしのいい席で、快調に走るバスを楽しみました。約4時間半でイカに到着。途中、停まらないバスなので早かったのです。
カブレラストーンがある博物館は町の中心であるプラサ・デ・アルマスに面した建物にあります。普段はあまり訪れる人もいないため、いつ開いているのかわかりません。行って、閉館中だったら困りますので、事前に電話で確かめておきました。

カブレラストーンの博物館
博物館に行くと、すぐに中年の女性が出迎えてくれました。カブレラ博士の家族かもしれません。女性は、博士の肖像画が掛けられ、たくさんの石が並べられた書斎らしき場所に招き入れてくれました。そして、カブレラ博士が最初に手に入れたという石を見せてくれたのです。

カブレラ博士の書斎
そこには魚の絵が線画で彫られていました。カブレラ博士はこの線画を見てただものではないと感じたわけです。そこからカブレラストーンが世界を騒がすオーパーツとなったことを考えると、感慨深いものがあります。ただ、私には、子供が描いたような、たただの魚の絵にしか見えません。

最初のカブレラストーン
そこから、女性の怒涛の説明が始まりました。石に描かれているあり得ない絵の説明は、次第にナスカの地上絵との関連に移り、地上絵は宇宙船が発着する場所だったこと、宇宙船の飛行は磁力によって行われており、その証拠に、磁力を持った石が地上絵の場所からは発見されていると言います。その、磁力でくっついている黒い石も見せてくれました。

宇宙船の発着方法を説明する図
ひとしきり説明が終わると、「次は倉庫を見せてやる」と言います。そこで、部屋から外の通りに出ました。その時、どうしてこんな街のど真ん中のいい場所に家があるのか聞くと、「カブレラ家は町の創設者の子孫だからもともとこの場所に家を持っていたのだ」と言います。そして、「昔は今よりもっと大きな家を持っていたんだ」と誇らしげに顔を輝かせました。
カブレラ博士は、医者であるだけでなく、この街の大変な名士だったわけです。科学的見識も十分に持っていたであろう、そんな人が、いい加減な石をせっせと集めるのはおかしな話です。この石には何か特別な秘密があると考えてもおかしくはないのですが・・・・どうもわかりません。
倉庫は、書斎がある部屋のすぐ隣にありました。厳重にかけられたカギを外して狭い倉庫の中に入ると、大量の石が所狭しと置かれています。大きいのから小さいのまで、その数は全部で1万5000個もあると言います。

所狭しと並べられた石など
その石の表面には様々な絵が描かれているのですが、多いのは恐竜の絵と手術の場面です。カブレラ博士は、この石の年代測定をした結果、1万2000年以上前に製作されたと主張しています。仮にこの年代が本当だとしても、恐竜は6500万年も前に絶滅していますので、その時代の人が恐竜を描けるはずはありません。

手術の様子を描いた石
手術に関しては、脳外科手術を古代人が行っていたということが明らかになっていますので、絶対ないとは言い切れませんが、絵を見る限り、そんなに信憑性があるとは思えません。
いろんな絵が描かれた、たくさんの石があって面白いのですが、見れば見るほど、あまり絵がうまくない人がおぼつかない手つきで描いた線画としか思えなくなります。
古代の人が描いた絵は、洞窟壁画などが残されていますが、やはり本物は違うのです。絵が好きな人ならある程度理解できると思いますが、小銭稼ぎの土産物として描かれた絵と、ある情熱の発露として描かれた絵では、見る人がそこから受ける感情が全然違います。残念ながら、この石の絵からは古代人の真剣さや情熱は全く伝わってきません。

一生懸命説明してくれた女性
ここまでやって来たのに、ちょっと残念な結果でした。しかし、信憑性はともかく、こういうものを頭から否定するのではなく、それなりに楽しむというのも大切ではないかと思います。
この後、私たちはイカ最大の観光地、アメリカのオアシスと呼ばれるワカチナに行きました。ここは砂漠の中に湖があって、ヤシの木陰で涼む人や湖でボート遊びなどをする人が大勢います。まさに、砂漠のリゾート。ここが南米ということを忘れそうです。

ワカチナの湖
私たちは、湖畔のレストランに入り、名物のアスパラガスのセビッチェをつまみに冷たい黒ビールを飲みました。そのうまさは格別でした。
この1カ月間、トラブルにあったり、病気になったり、いろいろとあったペルー旅行でしたが、最後がよければ全てよしという感じで、ほろ酔い気分も手伝って、この上ない幸福感に包まれました。
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