大学都市サラマンカへ行く! スペイン旅行記㉑
2019-06-30
サラマンカの風景
バスの切符購入は自動販売機で!?
今日はビルバオからサラマンカに移動します。
所要時間は3時間半ほどですが、いつものALSA社のバスの切符を前日に購入しました。
ところが、ここで問題がありました。人気のあるALSA社の窓口は多くのターミナルで切符を買う人の行列ができています。ここでも行列だったので並んだのですが、係員が「切符は自動販売機で買ってくれ!」と言っています。
これもよくあることなので気にせず行列に並んだままでいると、今度は窓口の人が客に何やら言っています。どうやら彼女は「自動販売機に行け」と言っているようで、切符を売ることを拒否し始めたのです。しかし、自動販売機での切符購入は操作がかなり面倒なのです。しかも、現金払いは最大で20ユーロ札しか使えないため、50ユーロ札を崩すことができません。そこで、ねばって行列に並んでいたのですが、とうとう「自動販売機だ!」と係員が叫び始め、行列の客全員が自動販売機に行く羽目になりました。
勝手がわからない外国人観光客が多く、自動販売機の前で操作を係員に教えてもらっているため、ここでも長い行列ができています。ただ、係員がいない販売機は空いていたため、すんなり切符の購入ができました。
バス会社としては、できるだけ自動販売機でクレジットカード決済にしてほしいのは理解できます。ただ、機械の操作に慣れない人や、現金を使いたい私たちのような旅行者には不便と感じてしまいます。
好天に恵まれたサラマンカ
朝11時発のバスで出発し、サラマンカのターミナルに着いたのは午後2時半ころでした。バスターミナルから街の中心部までは少し離れていて、徒歩で15分~20分程度かかります。天気のいい日で、冬の寒さが厳しいサラマンカもポカポカ陽気。湿度も低いため風がサラッとしていて歩いていても気持ちがいいです。
サラマンカは観光地としては有名ではありませんが、スペイン最古の大学があり、スペイン語の学校も多いことから、語学留学のメッカとして知られています。私も25年前に約3か月間、語学留学していました。当時と、街の様子はほとんど変わっていません。
宿泊は街の中心に近い中級ホテル。シーズンオフの平日ということもあって、ツインの部屋が一泊税込み7000円ほどと格安で泊まれたのはラッキーでした。
世界遺産に登録されているサラマンカの旧市街はコンパクトにまとまっていて、歩いても楽に見て回れます。まずは、街の中心になるマヨール広場に行きます。宿泊しているホテルが旧市街にあるため、クラシックな石造りの重厚な建築物が並ぶ通りをゆっくり歩いて、10分ほどで到着。
マヨール広場に続く道路。正面のアーチをくぐると広場。
スペインで最も美しい広場
スペインで最も美しい広場と呼ばれるのがサラマンカのマヨール広場です。マヨール広場はサラマンカだけでなくスペインの主要都市の中心部にあります。その多くは街の象徴となるような建造物で囲まれ、市民の憩いの場となっています。これまで多くのマヨール広場を見てきましたが、たしかにサラマンカのマヨール広場の全体的に調和のとれた美しさは別格です。
このマヨール広場が作られたのは18世紀のことです。スペイン・バロックのチュリゲラ様式を生み出したチュリゲラ兄弟の末弟が設計した周囲の建造物は、過剰な装飾を避けて広場全体の美的調和を求めた傑作とされています。昼間見ても美しいのですが、夜の明かりに照らされるとその幻想的な美しさが一層際立ちます。
広場の周囲にはレストランやバルが並んでおり、その前にテラス席が設けられています。暑い日だったので、テラスの席に座ってカーニャ(生ビール)を飲みながら、広場を行きかう人たちを眺めて過ごしました。こうした、くつろいだ時間を持てるのは、個人旅行の大きな利点だと思います。
マヨール広場はにぎやかだ。
夜の美しさは格別。
ホタテ貝の装飾が面白い「貝の家」
まずは、マヨール広場から伸びるにぎやかなマヨール通りを南に下がると、かつて巡礼者を守るサンティアゴ騎士団の拠点として使われた「貝の家」があります。ゴシック様式の石造りの建物の壁に数多くのホタテ貝の装飾が取り付けられているため、この名がついたのです。
ホタテ貝というのはサンティアゴ巡礼のシンボルなのですが、その理由については、目的地であるサンチャゴ・デ・コンポステーラに着いた巡礼者たちがホタテ貝を食べ、貝殻を記念に持ち帰ったなど、諸説あるようです。内部は図書館になっていますが、それ以外の部分は見学できます。
貝の家。壁にたくさんのホタテ貝の彫刻が取り付けられている。
貝の家の内部。1階は図書館になっている。
繊細で華麗な大学正面の彫刻
次はサラマンカ大学です。古い建物が並ぶ路地を入って行くので分かりにくく、少し迷った後に到着。
大学の正面にはプラテレスコ様式と呼ばれる装飾が施されたファサードがあります。プラテレスコとは銀細工のような繊細で華麗な装飾のことで、16世紀のスペインル・ネッサンス期に教会や大学のファサードなどに施されました。中でも、サラマンカ大学のファサードは装飾の繊細さと複雑さで知られています。目を引くのは、三段に分かれた彫刻のうち下段中央に彫られたカトリック両王の像でしょう。
また、この中にある複数の骸骨のうちの一つに蛙が乗っているのですが、これを見つけた者は学業が成就するという言い伝えがあります。これを探すのはかなり難しいのですが、時間があれば挑戦してみるといいと思います。ファサード前の広場にいる土産売りのおばさんに聞けば見つけられると思いますが…。
サラマンカ大学の華麗なファサード
蛙が乗った骸骨を見つけるといいことがあるかも…。
大学の広場。左奥の入り口を入ると中庭があり、語学留学生のための施設もある。
スペインのオレンジジュースは美味しい!!
この日も天気が良く、気温も比較的高かったため喉が渇きました。大学近くの道を歩いていると、学生らしき若者たちがたむろするバルがあったので入ってみました。石造りのかなり古い建物で、店の中はかなり広く、薄暗い洞窟のようです。普通のバルとは雰囲気が異なり、大学の生徒や職員などが休憩や軽食に利用している感じがします。私たちは喉が渇いていたので、カウンターでオレンジの生ジュースを注文しました。
スペインではオレンジの生ジュースがよく飲まれるのですが、バルなどには丸ごとのオレンジを絞る専用の機械が置かれています。ミキサーではなく、オレンジをゆっくりすり潰すように絞るのです。100%オレンジジュースですし、スペインのオレンジは甘いので、このジュースが本当にうまいのです。
多くのカフェやバルにあるオレンジ絞り器。オレンジが丸ごと入っている。
コロンブスが宿泊したサン・エステバン修道院
次はサン・エステバン修道院です。この修道院のファサードもプラテレスコ様式の華麗な彫刻が特徴です。これだけの見事な彫刻は他ではなかなか見られません。また、ここはコロンブスが航海術や天文学を学ぶためにサラマンカ大学通っていた際に宿泊していた場所ということです。
サン・エステバン修道院のファサード
チュリゲラ様式の祭壇
街が綺麗に見える場所へ行く
ここから南に向かい、街の前を流れるトルメス川に架かるエンリケ・エステバン橋を渡ります。一旦、街の外に出るのは、サラマンカは川の対岸から見たほうが美しいからです。橋を渡った所から川沿いに西に歩くと、川面に映るカテドラルなどの街の景色が綺麗に見える場所があります。ここから見る景色も、スペイン随一だと思います。
さらに歩くと、ローマ時代に作られた石造りのローマ橋があります。この橋は歩行者専用になっていて、風情があっていいのです。
サラマンカはきれいな街だと思う。
ローマ時代の橋を渡って市内に入る。
カテドラルの屋根に上る!
ローマ橋を渡って市内に戻ると、カテドラルに向かいます。ここのファサードもプラテレスコ様式の傑作とされていますが、これだけ彫刻を見ると、エストイ・アルト(もう十分)という感じになります。カテドラルの内部に入るには入場料が必要です。観光地ですから仕方ありませんが、ここでは内部に入らず、カテドラルの屋根の上や塔に登れるイエロニムス(IERONIMUS)に行くことにしました。
カテドラルの横にある小さな入り口から中に入ると、エレベーターで建物の上に登っていきます。最初は新カテドラル横のテラスに出て、そこからゴシック様式の見事な建築物を間近に眺めることができます。そこから、屋根の上を渡り、カテドラル内部の身廊や主祭壇を天井近くから眺めたり、鐘が吊るされた塔の内部に入ったりできるのです。
見学ルートとして整備されているわけではなく、保守作業をする人が使うような通路を伝って高い場所を移動するのでスリルがありますし、高所恐怖症の人にはきついかもしれませんが、高いところから見る景色は綺麗です。入場料は3.75ユーロですが、その価値は十分にあると思います。
カテドラルに向かう細い道
カテドラルのファサードもプラテレスコの傑作。
イエロニムスに行くと身廊上部から主祭壇を見ることができる。ちょっと怖いけど…。
カテドラル上部のテラス
抜群の眺望が楽しめる。
カテドラル上部の構造物が近くで見れる。
鐘楼にも登れる。
改めてサラマンカの街を見ると、見応えのある場所が多く、スペインの他の有名な観光地と比べても負けていない感じです。世界中から学生が集まる街ですから、比較的物価も安く、おいしい料理やタパスを出すレストランやバルも多いのです。
昔、ここに住んでいた時には、町外れの汚いアパートに住み、中心部の学校に通っていました。通学路を歩いていると、古臭くて、寒くて、暗い街だとしか思わなかったのですが、観光で来ると印象は変わるものです。
やはり、この街は観光客として来るのがいいと思いました。
教会の屋根ではコウノトリが巣を作って子育てしていた。
芸術都市ビルバオへ行く! スペイン旅行記⑳
2019-06-26
近代的なビルとクラシックなビルが共存するビルバオ
サン・セバスチャンからビルバオへバス移動
今日は、バスク地方の主要都市であり、近年の都市創造事業の成功によって注目を浴びているビルバオに向かいます。
サン・セバスチャンからビルバオまではバスで1時間半ほどです。バスの本数も多いため事前にチケットを購入する必要はないだろうと思ったのですが、最初にいつものALSA社の窓口に行くと、次のバスは満席と言われました。
窓口の係員が「急いでいるなら他社のバスにしな」と言うので、隣に窓口があるPESA社に行くと、「あと5分で発車」と言います。すぐチケットを購入してプラットフォームに向かうと、待っていたバスに乗車しました。車内はほぼ満員。自由席のため私たちはそれぞれ空いていた席に離れて座りました。やはり、チケットの事前購入は必要と痛感しました。
バスは無事にビルバオのバスターミナルに到着。現在、バスターミナルは工事中らしく屋根もない駐車場のような所にバスは停まりました。
ターミナルがあるのは街の西側に当たるサン・マメスという地区です。近くに、地元のサッカーチームであるアスレティック・ビルバオの本拠地となっているサッカースタジアムがあります。
ホテルはこのスタジアムのすぐそば、ターミナルからは歩いて5分ほどのところにありました。その名も、ホテル・サンマメス。スタジアムでサッカーの試合が行われる時にはファンで一杯になるでしょうが、5月上旬のこの時期は閑散としています。ペンションレベルのホテルですが、設備は整っており、部屋も清潔で悪くないです。
ビルバオの仮バスターミナル。新しいターミナルは間もなく完成する。
サン・マメス・スタジアム
路面電車トラムに乗る!
ビルバオの見どころは、ビルバオ・グッゲンハイム美術館を中心とした都市創造プロジェクトによって開発された地域です。
かつて、ビルバオは鉄鋼業や造船業が盛んで、スペイン北部の中心的な工業都市として発展しました。ところが、1980年代に入ると産業が衰退し、深刻な経済状況と社会不安を引き起こしたのです。こうした状況から街を救うために計画されたのがアートを中心とした都市創造プロジェクトであり、その先駆けとして建設されたのがグッゲンハイム美術館でした。
サン・マメスからグッゲンハイム美術館までは歩いて行くには少し遠いのです。地下鉄やバスもありますが、最も便利なのはトラムと呼ばれる路面電車です。このトラムも都市創造の一環として地下鉄などと共に整備されたもので、電車のデザインが美術館周辺の近代的な風景にマッチしています。
サン・マメスの停留所に行くと、ホームに切符の販売機があるので電車を待つ間に切符を購入しました。トラムの料金は1回1.5ユーロ。さらに、その切符を販売機の隣にある改札機に挿入し、使用した時間を刻印しておきます。これをしなければ切符を使い回しできそうですが、途中で切符のチェックがあった場合に無賃乗車とされて罰金が科せられるそうです。
電車に乗って約10分でグッゲンハイム美術館近くのグッゲンハイム停留所に到着しましたが、乗り越して次のウリビタルテ(Uribitarte)で下車。この停留所のすぐそばに、スペインの著名な建築家が作った独特なデザインのスビスリ橋があります。歩行者専用のそれほど大きくない橋ですが、湾曲した支柱と吊り橋のようなワイヤーが面白いデザインになっています。
独特なデザインのトラム
こちらも独特なデザインのスビスリ橋
多くのオブジェが置かれているグッゲンハイム美術館
スビスリ橋からグッゲンハイム美術館に向かうと、美術館の敷地内に様々な彫刻などの芸術作品が置かれています。その中には、六本木ヒルズの庭にも置かれている「ママン」という巨大な蜘蛛のオブジェや、日本人女性芸術家による「霧の彫刻」という、霧を使ったパフォーマンスなどがあります。
グッゲンハイム美術館は外から見ても巨大な建造物ですが、内部も非常に広く、世界各国の芸術家による数多くの近代アートが展示されています。ヨーロッパの有名美術館の展示は、ルネッサンスから印象派にかけての絵画作品群が中心となっており、なじみがあるために見ごたえも感じます。一方、近・現代の芸術は絵画だけではなくオブジェや映像を含めて幅広く、難解な感じで、見ていてもちょっと疲れました。
グッゲンハイム美術館は金色に輝いている
巨大な蜘蛛のオブジェ「ママン」
定時になると霧が吹きだす、日本人芸術家の作品「霧の彫刻」
美術館の内部は広い
廃墟のビルバオを思わせる展示作品
シンボルの「パピー」は檻に入っていた。
最後に、グッゲンハイム美術館のシンボルともいえる芸術作品「パピー」を見るため、玄関横のテラスに向かいました。高さ12mの子犬の形をした骨組みに色とりどりの花を植え込んだもので、ビルバオ市の象徴ともなっています。
しかし、この時は巨大な足場で子犬が囲まれていました。花の植え替え作業の最中だったのです。残念ですが、こうした変化も芸術の一面として見れば、面白い風景と言えます。
檻に入れられた「パピー」。よく見えない…。
曇り空の下で光を放つ巨大な美術館を振り返ると、アートを都市創造の核に据えるというのは素晴らしいアイデアだと感じます。この建物は「現代建築で最も称賛されるべき作品のひとつ」と評価されているそうです。なにしろ、この美術館の成功によってビルバオの名は世界に知られるようになり、サン・セバスチャンよりも多くの観光客を集めるまでになったのですから。
古いスペインだけでなく、ビルバオのように新しいスペインの躍動を感じる街が、日本でももっと注目を集めるようになってほしいものです。
街の中心部、ネルビオン川の岸で輝く美術館の建物
フランス国境の歴史都市オンダリビアへ行く! スペイン旅行記⑲
2019-06-23
オンダリビアの旧市街
フランス国境の城塞都市へ!
宿泊先のホテルの女性経営者が「絶対に行った方がいい!」と勧めてきたのが、フランス国境に位置する歴史都市オンダリビアでした。そこで、冷たい雨が降る朝、出かけてみました。
オンダリビア行きのバスはカテドラルの近くにあるギプスコア広場から出ています。観光には向いていない日でしたが、路線バスは観光客を中心にほぼ満員でした。
サン・セバスチャン空港を経由して約40分でオンダリビア中心部のバス停に到着。雨の中を港があるマリーナ地区に向かいました。
ビスケー湾の入り江に面した港には人気がほとんどなく、黒い雲が垂れ込めた寒々とした風景が広がっています。対岸にはフランスの町アンダイエが広がっており、数人の客を乗せた連絡船が海上を走っていました。少し前のテレビ番組で女優の石原さとみが乗ったボートです。
景色はきれいですし、晴れていればフランスまで行くこともできますが、雨では長居をする気にはなりません。早々に城壁の中にある旧市街に向かいました。
港から入り江を望む。向かいはフランス。
オンダリビアのマリーナ地区。フランス行きのボートがある。
雰囲気のいい城と家々
海岸側の道路から坂を上って城壁内に入ると、周囲に古い家が立ち並ぶアルマ広場があり、現在はパラドールになっているカルロス5世城もあります。
オンダリビアは古くから周辺国にとって戦略上、重要な位置にあったため、この城塞は何度も包囲軍との戦いを経験したそうです。城としては小さく、カルドナ城のように難攻不落という感じはしませんが、苦闘の時代を経た重厚な石造りの館をよく残していて、雰囲気がいいです。
このアルマ広場を中心に城壁内の狭い範囲に独特のデザインの古い町並みが集中しています。石畳に街路を歩くと、フォトジェニックな場所がたくさんあって楽しいです。昼近くになって雨も上がり、古い時代にタイムスリップしたかのような街歩きを存分に楽しめました。
旧市街は城壁の中にある。
アルマ広場と周囲の家々。左側にカルロス5世城がある。
パラドールの中のカフェ。誰でも利用できる。
独特のデザインの家が並ぶ
雰囲気のいい通りが多い
レベルが高いレストランに感動
昼はマリーナ地区にある有名な海鮮レストランに行くことにしていました。天気が悪い日なのでそんなに客はいないだろうと思っていたのですが「満席」と断られました。どうやら、団体客が予約をしていたようです。オンダリビアでは一番の有名な店ですから仕方ありません。
そこで、店を探した結果、YOLA BERRIというレストランに入ってみました。店内には10人くらい座れる長いテーブルがいくつかあり、カウンターにピンチョスが並んでいます。
「ここ、バルだよね…?」と思いながら、ウエイターに「定食はないの?」と聞くと、「食事なら地下に行って!」と言われました。
たまたま入ったレストランだが、かなり有名な店だった。
そこで階段を下りてみると、少し狭いですが、白いクロスがかかったテーブルが並ぶいい雰囲気のレストランになっていました。
定食は飲み物とデザートの他、二つの皿を数種類の料理から選ぶようになっています。一番目の皿は、私がアスパラガス、妻はエビのサラダ、二番目の皿は二人とも定番のメルルーサを選びました。
少しして出てきた一番目の皿を見て驚きました。高級フランス料理と言ってもおかしくないほど洒落ているのです。アスパラガスはハムで巻いて火を通し、生野菜が添えてあります。エビのサラダは生野菜とマヨネーズ和えサラダの上に焼いた手長エビが乗っています。これが、昼の定食で食べられることにちょっと感動しました。二番目の皿のメルルーサも美しい盛り付けです。味はもう文句のつけようがありません。
最後のデザートはプリンでしたが、これも手作り感があって美味しかったです。
これで値段は一人分税込みで16ユーロ(約2000円)ですから、スペインの昼の定食としては少し高めという程度。バスクの美食の伝統はこういうところにまで浸透しているのかと思いました。
一番目の皿、アスパラガス
一番目の皿、エビのサラダ
二番目の皿、メルルーサ
デザートのプリン
美しい街と美味しい料理に出会い、雨の中をバスで出かけてきた甲斐がありました。旅行の醍醐味は、「知らない街で思いがけないことに出会うことだ」と改めて感じた一日でした。
サン・セバスチャンの有名レストランへ行く! スペイン旅行記⑱
2019-06-22
サン・セバスチャンのコンチャ海岸
三星レストランが多いバスク地方
スペインの中でもサン・セバスチャンは美食の町として知られています。
「SAN SEBASTIÁN TURISMO」によると、ミシュランの3つ星を獲得したスペインのレストラン7店のうちの3店がこの街にあるということです。最新のミシュラン2019年版では、サン・セバスチャンで星3つを獲得したレストランは2軒でしたが、サン・セバスチャン圏の1軒を含めて3軒、さらにバスク地方まで広げると4軒となっています。
せっかくサン・セバスチャンにいるのですから星付きレストランで食事をしたいと思いました。そこで、比較的リーズナブルでカジュアルな店として選んだのが「ボデゴン・アレハンドロ」でした。
この店は、サン・セバスチャンの伝説的な料理人で、ミシュランの7つの星を持つというマルティン・ベラサテギが最初に働き始めた所です。元々、彼の両親が経営しており、20歳で経営を引き継ぐと、25歳の時にバスク地方で初めてミシュランの星を獲得したそうです。
現在、彼はサン・セバスチャンの近くの町で「マルティン・ベラサテギ」という3つ星レストランを経営しています。従って、現在、この店は星付きではないのですが、その美食の伝統は受け継いでいるはずです。
事前に店のホームページで昼の席を予約し、出かけました。
旧市街のバルが集まった「31 de Agosto」通りに店はあり、注意していないと見逃してしまいそうな感じの入り口でした。
いつも賑やかな「31 de Agosto」通り
ボデゴン・アレハンドロの入り口
上品でリーズナブルな料理を楽しむ
入り口の階段を下りて行くと、照明を落とし、落ち着いた雰囲気の空間になっています。ただ、思っていたよりカジュアルで、テーブルにはクロスもないし、客たちもかなりラフな感じです。
メニューにはコースとアラカルトがありますが、少量の料理を数多く味見できるテイスティングコースを頼みました。ワインは、やはりリオハの赤のハーフボトルにしました。
コースの内容を記したお品書きをもらいましたが、いろんな食材名が書かれていてよくわかりません。
前菜として、白いムースやレモンとベルベレッチョ(貝の一種)のジュースと書いてあるスープ、茶わん蒸しのようなものと共に、イワシの身の酢漬けに胡椒を加えたものが出てきました。どれもおいしく、日本人の口にも合う味付けに感じます。
ワインはリオハの赤。手前の紙がお品書き。
最初にイワシの酢漬けなど色々出てきます。
次に、低温調理の卵にエメンタルチーズのソースをかけたものが出てきました。まるで温泉卵のようですが、高級な料理っぽくなる味付けはさすがという感じです。
次は魚料理で、鉄板で焼いたメルルーサに柑橘系のソースをかけてあります。このメルルーサは肉厚ですが驚くほど柔らかく、身の甘味と酸味のあるソースが絶妙にマッチしておいしかったです。同じメルルーサでもパラドールのレストランでは味がぼやけていただけに、さすが有名店という感じです。
次は肉料理で、プレサ・イベリカという、イベリコ豚の前足の付け根にある霜降り肉を低温でローストしたものに岩塩をかけています。付け合わせはジャガイモのピューレです。
これが豚?という感じの肉で、柔らかくて、深い味がします。そこに、岩塩の塩気がちょうどいい感じでした。
洋風温泉卵?
メルルーサの柑橘ソースかけ
プレサ・イベリカのロースト
後は、2種類のデザートが出てきました。最初はトリッハと呼ばれる厚切りのフレンチトーストにカラメルを絡め、アイスクリームを添えてあります。次は、イチゴにマスカルポーネクリームを添えた華やかな感じのデザートでした。この辺は、予想通りのおいしさと言えました。
最後は、コーヒーと焼き菓子で締めですが、この焼き菓子が入った木の容器がしゃれていました。
これで二人合わせて、税込み123ユーロ(約1万6000円)でした。近くにあった一つ星の店の場合は、テイスティングコース一人分だけで100ユーロを越えていましたから、かなりリーズナブルではないかと思います。
フレンチトーストのアイスクリーム添え
イチゴのマスカルポーネクリーム添え
コーヒーと焼き菓子
サンセバスチャンを一望するモンテ・ウルグルに登る
天気のいい日だったので、昼食後、旧市街を見下ろすモタ城という要塞がある丘、モンテ・ウルグルに登りました。
山頂にはキリスト像が立っており、明るい太陽の下で多くの人が春の一日を楽しんでいます。ここからは青いコンチャ湾とその先にコンチャ海岸が見えます。そして、赤瓦の屋根が続く旧市街と南欧の建物が連なるサン・セバスチャンの光景が本当に美しいです。
天気が悪い日が多かったこともあり、この日の気持ちよさは格別でした。
モタ城から見たコンチャ湾
サン・セバスチャンの街並みが美しい
山頂にキリスト像が立つモンテ・ウルグル
美食の都サン・セバスチャンに行く! スペイン旅行記⑰
2019-06-20
サン・セバスチャンの海岸
高速鉄道でサン・セバスチャンへ
今日はバルセロナからサン・セバスチャンに移動します。
サンツ駅から朝7時半の高速列車で出発し、サン・セバスチャン到着は午後1時半ころになります。
ところで、スペインでは複数の言語が使われています。バルセロナなどのカタルーニャ地方ではスペイン語と共にカタルーニャ語が使われていますが、サン・セバスチャンが属するバスク地方ではバスク語が使われています。このため、街名などの表記がバスク語になっていることも多いのです。サン・セバスチャンはバスク語でドノスティア(Donostia)と呼ばれます。意味はスペイン語と同じでキリスト教の聖人、聖セバスティアンのことです。
列車はほぼ時間通りにサン・セバスチャンに到着。駅舎を出て街の中心部に向かって歩くと、すぐにウルメア川にかかるクラシックなマリア・クリスティーナ橋に出ます。両端には馬に乗った人物の彫像が乗った大きな塔があり、橋からはヨーロッパの古都らしい落ち着きのある美しい街を眺めることができます。
サン・セバスチャンに到着した列車。
立派な塔を持つクラシックな橋
橋から見たウルメア川。
コインランドリーが高い!
橋からまっすぐ西に移動するとカテドラルにぶつかります。予約したホテルはこの近くに位置していました。日本のゴールデンウィークの時期になっていたため、部屋が空いているホテルが少なく、料金もかなり高くなっていました。最近、日本のテレビで何度も紹介されているサン・セバスチャンですから、日本人旅行客がすごく多いのです。
年配の女性が経営するアットホームなホテルでした。部屋などは安宿と言っていいレベルですが、3つ星のため設備が整っているのが救いでした。
ホテルに荷物を置くと、食事と洗濯のため中心街に出かけました。ネットでコインランドリー(lavandería autoservicio)の場所を調べたところ、バルが集まっている地区にあったのです。
街は昼食や飲み歩きを楽しむ人たちで混雑していました。そんな路地に小さなコインランドリーを見つけ、洗濯機に洗濯物を放り込みました。店によって違うのですが、ここの洗濯機は洗剤を別途投入する必要がないタイプでした。その代わり料金が高く、洗濯だけで7ユーロ(約900円)も取ります。バルセロナでは3.5ユーロ(洗濯量によって変わる)でした。場所柄、観光客相手の価格なのでしょう。
雰囲気のいい中心街の道。
バルの料金計算はいい加減だ!
洗濯機を回している間、ピンチョスを楽しむことにしました。最初に行ったのは、テレビ番組で女優の米倉涼子が行ったというバルでした。ここは店の中に日本人観光客が大勢いて、バーテンダーの表情も冴えない感じでした。
そこで、向かいにある比較的空いていたバルに入りました。カウンターでカーニャ(生ビール)を頼み、目の前に並ぶピンチョスから好きなものを選んで皿に取ります。ところが、見ていると、どうもバルセロナとは会計方法が違う感じなのです。
そこで「料金はどうやって計算するの?」と若いバーテンダーに聞いてみました。すると、「オレが見ているから自由に食べていいよ」と言うのです。
「バルセロナでは串の数で計算したけど…大丈夫?」と聞くと、「バルセロナとは違う。大丈夫だ!」と言います。
「本当かな?」と思いましたが、そう言うのならと好きなものを食べ「お勘定!」と言いました。
すると彼は「えー…」と考えています。やっぱり見てない感じです。そこで、私が「4つ」と言うと、彼は笑顔になって飲み物を含めた計算をしてくれました。
いい加減な感じですが、これがスペインですから気にしないことです。
次の店でも、バーテンに計算方法を聞くと「オレが見てる」と同じことを言います。そこで、わざと遠くにあるピンチョを取ったり、トルティーヤの調理を頼んだりしました。そして勘定を頼むと、「5ユーロ」と言うのです。
5ユーロでは安くても飲み物二杯とピンチョ1つくらいです。私たちは飲み物二杯とピンチョ二つにタパスを一つを頼んでいましたから、ここのバーテンもしっかり見てないようです。まあ、それでも店は繁盛しているのですからいいのだと思います。
昼から客でにぎわうバル
ピンチョスがカウンターに並ぶが取りづらい。
おいしそうなピンチョスが多い
魚介類が多くて、日本人にも合う味付けだった。
それにしても、人気のバルが集まった裏通りの昼の賑わいはすごいです。多くのバルが昼の酒とピンチョスを楽しむ人であふれ、通りはそぞろ歩きを楽しむ人や店先に置かれたテーブルで酒を飲みながら談笑する人々でごった返しています。
サン・セバスチャンは美食の町と言われていますが、それよりも安上がりなバルで酒とつまみを楽しむのが好きな人には、こたえられない町だと感じました。
昼を楽しむ大勢の人であふれる通り。